(6)労働時間管理の指導を強化(厚生労働省通達で強化されたこと) 2001年4月6日に、サービス残業の慣行の是正を指導するための通達が、厚生労働省労働基準局監督課から各都道府県労働基準監督局宛てに発せられました。この文書は厚生労働省の組織内部において国家行政組織法14条に基づいて発せられる「通達」であり、直接厚生労働省の外部にその法的作用をおよぼすものではありませんが、都道府県の労働基準監督署はこの通達に基づいて、民間企業に対する行政指導を強化することになります。 このなかでは、都道府県の労働基準監督署は、それぞれの使用者に対して、始業・終業時刻の確認および記録を正確におこなうこと、そのためには始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法として、原則として「ア 使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること」「イ タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること」としています。また労働者からの自己申告の場合もあることから、そのために、使用者が「ア 自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと」「イ 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること」「ウ 労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと。また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること」を指導するとしています。 これらは労基法32条の枠内でおこなわれるものであり法改正をともなったものではありません。たしかに単なる行政指導であり、「あくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるもの」(行政手続法32条)です。しかし労基法32条の趣旨を尊重して、使用者はこの通達による指導に従うことが社会的に要請されるとともに、都道府県の労働基準監督署は、この通達に違反することなく、従来以上に努力することが要請されます。 |