(6)36協定締結についての過半数労働者代表選出方法(労基規則改正)

 労基法32条では「1日8時間を超えて労働させること」を禁止していますが、この例外、すなわち時間外労働(=残業)の条件を定めているのが36条です。そこでは、
「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合において」時間外労働させることができると規定しています。この場合に、この「労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者」とは誰のことを指すのかが問題となります。すなわち、ここでは「代表する者」とされているだけで、それが直接の従業員の多数のことをさしているわけでもなく、場合によっては使用者が誰か特定の従業員を指名して「この人が「労働者の過半数を代表する者だからこの人の意見を聞いて36協定をつくるので、従業員のみなさん、賛成してください」と朝礼か何かで述べたとしても、問題はないのかということにもなります。
 ここで最近改正された労働基準法施行規則(厚生労働省令)の規定を紹介しておきます。
 この省令では、6条で以下のように規定しています。

第六条の二 法第十八条第二項、法第二十四条第一項ただし書、法第三十二条の二第一項、法第三十二条の三、法第三十二条の四第一項及び第二項、法第三十二条の五第一項、法第三十四条第二項ただし書、法第三十六条第一項、第三項及び第四項、法第三十八条の二第二項、法第三十八条の三第一項、法第三十八条の四第二項第一号、法第三十九条第五項及び第六項ただし書並びに法第九十条第一項に規定する労働者の過半数を代表する者(以下この条において「過半数代表者」という。)は、次の各号のいずれにも該当する者とする。
一 法第四十一条第二号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
二 法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。
A 前項第一号に該当する者がいない事業場にあつては、法第十八条第二項、法第二十四条第一項ただし書、法第三十九条第五項及び第六項ただし書並びに法第九十条第一項に規定する労働者の過半数を代表する者は、前項第二号に該当する者とする。
B 使用者は、労働者が過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにしなければならない。
(1998年労働省令45号全面改正、1999年労働省令51号一部改正)

 このように、この省令は必要な場合には投票や挙手等で労働者が自主的に過半数代表者を選出することを可能としているものといえます。さらに、これを保障するために、第3項で不利益取扱いの禁止が規定されていることが重要です。なお、この省令というものは通達とは異なって、直接的に行政機関の外部に対する法効果を有するものとされ、したがって一般の民間企業に対して、労基法と同様法的拘束力を有しています。

もどる