(6)朝から直行した場合の時間外労働性

 朝、自宅から出先に直行を指示された場合、その移動時間が通常の出勤時間よりも長く、通常よりも早い時間に自宅を出なければならない場合に、その時間はどのように評価されるのでしょうか。場合によっては、使用者は労働者に対して遠方の出先に出張を命じることがあり、その場合に早朝出勤を余儀なくされることもあります。この場合の移動時間は、はたして通常のように出勤にあたって必要とされる時間ではない、すなわち拘束時間ではないと評価されるのでしょうか。
 通常出先への移動にあたっては、事業場の始業時間を起点として考えられています。この場合、移動時間は当然労働時間として計算されます。しかし出先に直行する場合には、その起点は自宅からであるということになります。この場合、この時間が事実上労働時間としての移動時間であるとすれば、いったん事業場に行ったうえでかかる移動時間との間でどういう違いがあるのかが問題となってきます。
 結論的にいえば、通常の出勤時間を超えてかかる移動時間は労働時間として評価されるべきであろうと考えられます。それは労働時間の起算点として、通常は当該事業場における始業時間を起点とし、その場合には通勤時間を含めた事実上の拘束時間が自宅を出る時間から起算されるのに対して、直行の場合には起算時点が自宅であるとしても、通常の事実上の拘束時間よりも長時間を拘束されることから、その時間差が問題となるからです。この時間については時間外労働時間であるという評価が適切であると考えられるべきです。
 日頃はアバウトに対応していると考えられるこの問題ですが、使用者も労働者も、本来的にはきっちりとした対応が必要であると考えられます。

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