くっつき虫のイタリア紀行(その2)


 親戚の方が来てから、その場のテンションは一気に盛り上がり、もうどうにも止まらない状態に。この雰囲気を逃す手はないと、日本からのお土産を取り出したのです。日本情緒あふれるお土産が出ると、その度に「フウオホッー!」と皆でピースサイン。

 頃合を見計らって、新郎と妹・パトリツイアが二階に案内してくれました。「すっごーーい!これみんな大理石?」階段から二階のフロアー全部が三葉虫やアンモナイトがうようよしているようなめっちゃすごい大理石なのです。「これ日本やったら、なんぼするのやろう」それにしても、すごいな。家の外からはまったくうかがい知ることのできない中身の充実さなのです。二階は10部屋もあり、三人家族ですから使用しない部屋がほとんどです。そのうちの一室に今回の結婚する二人へのプレゼントを展示していました。豪華な電気製品、家具といった高価なものではなくって、身近な心のこもったプレゼントです。この地方ではこのようにプレゼントをきちんと展示して、訪れるお祝い客に「私たちはこのようにプレゼントを喜んでいる。送り主の気持ちを大事にしていますよ」と気持ちを表しているのですね。

 やはり一日の終わりはありました。イタリア時間で12時を過ぎる頃、やっと眠れることになりました。風呂を用意してくれたのですが、一階に積み上げていた薪が基本的なエネルギー源となっており、年間で20トン使用するそうです。沸かしたお湯は炊事場、洗面所、風呂に供給するのです。ガスや電気に頼らないところがいいですね。この家族だけかも分かりませんが、部屋の明かりは日本のように「こうこう」と燈すことはありません。日本からのお客さんがきていても、日ごろの明るさを変えようとしません。薄暗い中で日常の生活を送っているようです。

 ところで一階の壁際の薪ですが、積み上げるのにもコツがいるそうです。日本の城壁の石積と同じで、大きさ、形を考えながら崩れないようにつむのは経験と素質が必要なのでしょう。新郎が言うには「僕のパパ、実に厳しい。僕はこれ嫌い。叔父さんはもっと厳しいけど、積み上げた薪は絶対に崩れないし、見てもきれい」

 海外旅行があたりまえになった今、ヨーロッパの風呂が狭くて洗い場がなく、日本人は不自由するなんてことは常識になっていますが、長旅の仕上げの風呂は肩までつかって、鼻歌が出せるような日本に限りますね。後で新郎に風呂のことを話すと「自分が将来イタリアへ帰ってきたら、お風呂は当然、日本様式にします。日本の風呂はいい」日本びいきの新郎は流暢な日本語で語るのです。


江口裕之(労働時間短縮研究所所長) 2002年8月12日記


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