クモとハトとツバメの話



【某月某日】
 我が家ではタバコ禁止令が厳命されているので、やむを得ずアパートの廊下で煙を上げている。
 おかげで3階の住人とは顔なじみだ。

 踊り場の蛍光灯には、家グモが大きいのから小さいのまで巣を作って、引っかかった虫をパクパク食べている。

 吸殻の小さなやつをクモの巣に投げつけてやると、たちまち食べ始めるアホなクモもいるかと思うと、「食いもんとちゃう!」とばかりに、足を巧みに使って吸殻をポイッと放り投げる賢いクモもいる。

 たまに、ハエやガガンボが巣を破壊するのだが、たちまちシャカシャカと巣直しを始める。
 そんな健気な奴らを「いとおしなあ」と連れ合いに話すのだが、いつもバカにされている。

【某月某日】
 休日に、洗濯物を干してる連れ合いが「ギャッ!」と悲鳴を上げた。
 「ハ・ハ・ハ・ハ・ト…」と腰を抜かしている。

 ベランダを覗いてみると、エアコンの外の機械の下に一羽のハトが微動だにせず鎮座している。

 よぉく見ると、卵を抱いている。ハトの巣だ。
 枯れ枝や細いハンガーで巣を作っている。

 彼女からすれば危険な人間が目の前にいるのにピクとも動かず、卵を守っている。

 ハトの巣は生まれてこの方、初めて見るので、「しばらくこのままにしておこう」と連れ合いの同意を求めたが、翌日にはすっかり撤去されていた。

【某月某日】
 5月、6月はツバメの子育ての時期だ。
 近くの商店街の軒下にはいくつものツバメの巣があり、親鳥が天皇陵の森から一所懸命エサを運んでくる。

 しかし、虎視眈々とネコやカラスがヒナを狙ってくる。

 親鳥は、すかさず威嚇飛行をするのだが、いかんせん小さな鳥だ。たまに巣を攻撃され、ヒナが犠牲になる。

 これも自然の摂理だ、などと嘆きつつも商店街をウロウロしているネコやカラスを見かけると、「あっち行け!」とばかりに妙な動きをしているのは私だけでなく、意外と大勢いたのだ。

海老原寿哉(労働時間短縮研究所事務局長)
(2002年6月16日記)


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