すべからく、適正価格に、適正労働時間に!

 3月初めの新聞に、全日空が50便に1便の割合で、その飛行機に乗っている乗客全員に1万円を返金するというニュースが掲載されていました。ジャンボ機が平均で約500席ですから、満席の場合は500万円が返金されます。国内線は1日770便の運行をしているそうで、毎日約15便の7,000人が対象となり、7,000万円が返金される事なるわけです。これを50日間実施するのですから、合計で35億円が返金となります。すごいですね。

 これだけ値引きをやっても儲かるのでしょうが、やり方がなにかまともでないと思えてなりません。返金は搭乗する直前に、現金で。いやらしいじゃありませんか。日本の航空会社は機内での自社ブランドの販売をやっていますね、外国からの帰りでも乗客の財布を空にすべく、関空でお渡しできるなどと過剰な気配りをやってくれています。そのような会社が返金を搭乗する際に行うのですから、どうせ期待していなかった金と機内販売で吸い上げられるのは目に見えています。

 返金してもすぐ取り上げようとする魂胆も腹が立ちますが、こんなに大胆な返金が出来るのであれば、全国で販売する基本料金を値下げする事は簡単に出来るはず。でもそんな発想は微塵もありません。

 すでに「50人に1人がただ」キャンペーンをやって、好評だったと言う事から、今回の企画を思いついたのでしょうが、このような偶然の幸運(?)と言うか、ばくちと言うか、投機的と言うか、発想の貧困化が気になって仕方がありません。

 携帯電話も同じようなやり方をやっています。「1円とかゼロ円で携帯電話機が手に入りる」と。労働者が作り上げた商品がただ同然で販売されるなんてことは許されるものでないのにやっている。これは携帯電話のシステムに登録させて、後で通話料金でがっぽり稼ぐのがねらいなわけですが、これとても電話機その物を商品価値に見合う価格にして、通話料金を値下げするのが当たり前だと思うのです。腹のそこが見え見えで、儲かりすればいいというやり方です。日本は何時からこんな商売が主流になったのでしょうか。

 巷にあふれている金券ショップで安いチケット類が販売されています。悔しい事に私も利用していますが、都会だけで田舎の人は利用できません。金券ショップそのものがないのですから当然です。これなども適正値段にして、みんなが等しく負担するやり方にしたほうがいい思うのです。

 こじつけになるようですが、働く時間についても同じことが当てはまると思えてなりません。労働者が等しく労働時間を分け合えば、長時間労働からも失業からも解放され、みんなが自分の時間を楽しむ事が出来るようになるのですから。


江口裕之(労働時間短縮研究所所長)
(2002年4月23日記)


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