こどもの時間



 「こどもの時間」というドキュメンタリー映画を江口所長と見に行った。ある保育園の園児たちのあるがままの姿を5年にもかけて撮影したという。
 ごはんは手づかみで食べるわ、鍋に火をつけておこげご飯を作るわ、泥遊びはするわ、落とし穴は作るわ、泣く喚く蹴飛ばすどつく・・・。まるで、昭和30年代頃の子供たちを見ているようだ。
 子供たちの無邪気な笑顔の反面、スクリーンを見ているこちらはハラハラドキドキ、というより、いまの時代に本当にこんな保育園があるの?と疑心暗鬼になるシーンがこれでもか、これでもかと映しだされる。  そして、衛生面は大丈夫だろうか、ケガをしたら保護者に怒鳴りこまれるんでないか、自分のこどもをこんな保育園にはよう入れん・・・などと余計な心配が増幅してくる。同じ年代のお子さんがいる女性に聞いたら、まったく同じ感想だった。
 映画を見終わってふと考えた。そういえば、自分も幼い頃は、泥だらけになって家に帰っていたし、毎日のように赤チンを塗っていたっけ。
 先日、宮崎駿さんが(何の賞だっけ?)金熊賞を受賞した時のインタビューで、「ビデオを作っている身だけれど、ビデオやゲームで一日中テレビの前に子どもがいるのはおかしい」みたいなことを言っていたと新聞で読んだ。
 ケガをして人に叩かれて痛みを知る、鍋に触ってみて熱いと感じる。そんな実生活の中での学習の積み重ねが人間を成長させるものだ。そう考えると、製作者の意図が見えてくる。今の社会・教育を痛烈に批判しているのではないだろうか。
 イッセー尾形さんが「ここにはこどもの時間がある」とナレーションを入れる。こどもたちは額からはみ出したように実にイキイキとした動作を見せる。大人の尺度で見てはならない。映画のオープニングシーンは卒園式の場面だ。卒園証書を受け取ったこどもたちのあの誇らしげな顔・顔・顔・・・。そう、こどもたちの表情がすべてを物語っている。

海老原寿哉(労働時間短縮研究所事務局長)
(2002年3月7日記)


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