イワンの馬鹿



 読んだことありますか、トルストイが書いた民話ですよ、あの。私も数十年ぶりに読む機会を与えられました。実は雑誌サライ2月21日号で、北御門二郎(きたみかど)さん、89歳のトルストイ研究家が語っていました。「カネと軍事力が国を滅ぼします」と。トルストイの中でも是非「イワンのばか」をお読みなさいと書かれています。そして、私はイワンの馬鹿でありたいと、非暴力主義を貫き、徴兵をも拒否され、今も肉を食しない徹底ぶりに関心させられました。

 実は今春闘で何をテーマに、何を成果にすべきかを考えていた昨年末、「カネやモノを超える価値」を労働者は捉えることが必要ではないかと考えていました。「社会の公正」さこそポイントではと、失業者や就職先の無い青年、障害者問題や環境問題の視点から考える本当の春闘をなすべきでないかと。

 イワンの馬鹿では、二人の兄、一人は大きな軍隊をもてば金持ちになれると確信をもち、もう一人はお金をもてば何一つ苦労することはないと信じてやまない人物をテーマに展開されている。しかし、大きな軍隊をもってみても、さらに大きな軍隊にやっつけられ、無一文に、お金を増やしても、もっと大金持ちに裸にされてしまう話しを通じて、トルストイは何が大切化をイワンの労働と平和主義に生き方の方向を諭しています。

 今日、2月18日、Bushが来日して「アフガンに自衛隊を派遣したことを持ち上げ、日本は構造改革、規制緩和を急げ」すなわち、アメリカのために銀行救済(日本の金融機関は300兆円ものアメリカ国債を買い続けている)をせよ

 なぜダイエーを救済した、アメリカのスーパーが進出出来ないではないか、アフガンの次はイラン、イラク、北朝鮮だ、自衛隊を派遣すべきだ、こんなこと言えるのはアメリカ崇拝の日本しか世界にはないと言ったのと同じではないか。

 しかもBushと小泉、男ふたりが抱き合いながら、二人で持ち上げ、二人で納得しあう有様に吐き気がしたのは私だけであろうか。イワンの馬鹿に登場する小悪魔ではないが二人にイワンの馬鹿を読み聞かせてやりたい。

 労働時間はカネでもある。ヨーロッパの労働時間は家族を基準に成り立っているから強い、日本の労働時間はカネとモノに引き換えるためにあるのではないか。だから弱さは克服できず、過労死も絶えないのではないか。いや仕事がそうさせているのだ、俺が残業しなければ会社は回って行かないことを知らないで言うなとの声もあるが、イワンの馬鹿が諭しているのです。

服部信一郎(労働時間短縮研究所専務理事)
(2002年2月18日記)


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